a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

《創作》レモネード


意味が通じなければやっていることのほとんどは、文字通り意味の無い行為で、独善的なものにしかならないだろうね。
言葉っていうのはさ、意味を通じさせる為のものなんだ、同じ言葉を喋っていてもほとんどの場合言葉の真意なんか通じてはいないのさ。
その点では、言葉よりも、標識や記号なんかは凄いよね、あの絵の中に全ての意味が込まれていて、言葉が込まれていて、大抵の人間はそれを見れば意味がわかるんだから。
標識よりも優れた発明を人間は出来ないと思うよ。

 

文字は物事を難解にしているよ。
特に漢字は芸術方面に舵を取り過ぎたんだよ、だから絵心の無い人間が見てももう意味不明なんだ、文字はもう意味不明なんだ。
そういう意味不明で世の中は溢れている、つまり世の中は独善が凝縮されているようなもんだ、独善、と言う言葉にはなにか黄色い炭酸のようなイメージが湧くね、黄色い粒が沢山弾けているような…けどもうそこにはほら…独善なんていう意味は消えているんだ、在るのはレモネード、ただそれだけ。

 

でもレモネードそのものを思い浮かべると決して、嫌な感覚じゃないんだ、むしろ焦がれていると言ってもいい。
今は喉が渇いているからね、夏場はレモネードの中で泳ぎたいくらいだよ、そう、まさにそうなんだ、だから世の中は独善で溢れかえっているんだ、その中で幾億もの人間が泳いでいるんだよ。
だとすると世の中というのは実は天国みたいなものなのかもね、真夏の最中にキンキンに冷えたレモネードのただ中で泳げるんだから、世の中ってのは神様に許された楽園なのかも知れないね。

 

…ごめんね、聞き飽きたかい?お喋りが好きでね、でも人間嫌いなんだよ、M氏…奴は信用できる、もうほとほと人間不信でね。
東京に来てからは特にそうなんだ、物事の裏側や真意ってものを隠すのがここのルールらしいな、だからつまらんのだよ喋っててもね、だからと言って仙台に居たら息が詰まるんだよM氏も自分もね、あの場所では浮くんだよ、その点東京は居心地がいいね。
え?いや、今この瞬間は楽しいよ、聴いていてくれているというのが伝わってくるし、M氏もいるしね、世話になってるんだ本当に、ふうん、あやちゃんにもそういう友人が居るのか。

 

ああそうそう、実は演劇もやってたんだよ、もうずっと前の話だけれどとある劇団で俳優をやってたんだ。
いやぁ演技の世界ってのはおかしい世界だね、この台詞を言うにはここで間を一、二、三秒開けて言う、でも決して力を込めずに!そう監督から指示されたらそのように言うんだ。
にもかかわらず、何故そう演技するのかの何故についての答えを常に自分の中で持っていなきゃ演技したことにはならない。
監督の指示通り何もかも一切合切の自分を捨てて動く駒でありながら…同時に自分の答えを絶対に持っていなきゃならないんだ。
それが出来ない奴には演劇は出来ない!…って監督が言うんだからそうなんだ、あれほど一つの団体というものに於いて、一つの信条を…もう信仰と言ったっていいな…とにかくそういう大切な概念を皆で守り合っている世界はそうそう無いよ。
一丸となって世界を作り上げて行く、でも訂正は出来ない、一度言って伝わらない台詞を二度三度言うことは舞台上では許されていない。
だから整合性の取れない…降りてくるもの…これにいかに理論付けをして発するかが俳優の仕事なんだ、全く矛盾しているだろ?
つまり演劇っていう世界の一番のルールはさ、観客、つまり自分たちの世界を他者に伝えることだけが目的でありルールなんだよ。
伝えられない芸術は、芸術ではない、そういう事かな。

 

降りてくるものを吐き出さなきゃならない性分の人間は確かに居るよね。
それが最も意味不明で、誰も理解できやしない、完全にレモネードの中から世界を見てさらなる濃度のレモネードを放出している。
当然社会の中ではやって行けないよね、演劇に来る連中もこの手のが多いけど、そうそう、一癖も二癖もある連中ばかりなんだ。
で、結局辞めてゆく。
監督の頭も相当濃度の濃いレモネードに覆われてるしね、実は劇団に所属する連中同士が一番話が通じてなかったりもする、皆降りてくるものに夢中で、互いに互いが何を伝えたいのか理解不能のまま稽古が進んでゆく、何だか怖くなって逃げてゆく。
それは他者に伝えるっていうルールと、このレモネードが完全に反発を起こすんだ、耐えきれなくなるんだ、だから劇団が形を保つってのは本当に難しいんだ。

 

でもさ、そういう意味不明なものこそ遊びの根源みたいな気もするんだ。
遊ぶために生まれて遊んで生きて遊んで死んでゆく、俳優を出来る人間は本当に両方の世界の架け橋になれる存在なんだよ。
完全なる独善と、他者に確かに伝えること、俳優は標識みたいなもんなんだ、それが出来る奴は絵の中に言語を埋め込んだみたいな存在なんだ、完全なんだよ。
標識の話に戻るけどさ、標識や記号ってのは美の根源なんだ。
他者に伝えるっていう役目と、言語化出来ない、理屈では説明出来ない美、それが合わさったのが標識や記号だよ、あれらは完璧な存在なんだ。

 

ん?…照れるなあ、そうか、あやちゃんは話すことが苦手なのか。
説明出来ない美を最早説明することを捨てた、か。
わからない奴はわからなくていい、その分圧倒的な美を作り出すことに力を注いで、それで他者を振り向かせればそれでいい、か。
でもこういう話をまさに今この瞬間言葉に翻訳している事に感心したって事かい?
それはきっと伝えたいことがあるんだね、まだ諦めてないんだね、文章を書いているってのはそういう事かもしれないね。
文章?書かないよ。
人と人との相性だから、普段はこんなこと喋らないよ、なんか今日はこういう事を喋りたくなったんだ、M氏とは専らプロレスの流れについての話ばかりだからね。
プロレス、ゲーム、アニメは…最近観ないなあ、M氏は管理職張ってて忙しいのに何であんなにアニメ観てプロレス観て、ゲームしてるんだろうな、あいつはおかしな奴だよ、無駄なことをしている、まさに遊ぶために生きてる人間なんだ、だから一緒に居て楽しいんだよ、本当に優しい奴だしね。

 

愛する人は一生に一人がいいなあ…裏切りは嫌だよ。
風俗とかも嫌だからね、行かないよホントに、そういうものがある場所ってだけで嫌だから、場が汚れるよね。
見境無い女好きとかも、正直さっぱりわからないよ。
女の人ってね、男よりもストレスがかかりやすいんだ、だから一人の男は一人の女を大事にしなくちゃならない、これが男のつとめだよ、妹が居るからこういう思考回路なのかも知れないけどさ。
とにかく男だってこういう人間も居るの、十把一絡げにしないでほしいね、世の中、なんか男がキモいみたいに言われてるけどさ。
…こんなこと別に話す必要も無いのに、なんで今喋ったんだろうねぇ。
時たま、なんか口が勝手に喋りたくなるんだよねえ、これこそが、俺なりの、降りてくるってやつだよ、ああ何だかレモネードが飲みたくなってきた…レモネードって店にあんまり置いて無いよなあ…それにしても今日のカードは凄いぞ、飯伏対ケニーオメガ!プロレス観戦までまだ時間があるな、仕方ないからレモンサワーでも頼むか。