a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

秘密の独り言

 

これは秘密の独り言。

 

以前あなたに度々質問されたことがありましたね、どうして君は枝葉の最後の一房であり続けるのかとあなたはよく問いかけてきましたね、私はその質問に対して本当の意味では答えていなかったのです。
私は自分がそれを出来ない理由ばかりを説明していたに過ぎないのです…あの時はまだ何一つ知らなかったのです、人を愛することを私はまだ知らなかったのです。

 

溝に溜った雨水を飲む雉鳩と目が合い、熱風が夕方の雲に渦を巻かせるとき、茂った庭木が私の頬に触れるとき、蜜蜂が私を許して通り過ぎ、ミミズの歌を聴いたその時…ようやく私の心に本当の答えが見つかったのです。

 

死んだ子供の写真を見ました、子供は灰色に変色し、桃色のおくるみのほうが子供の何倍も目覚めているかのようでした。
私はその写真を見たときにはまだ、あなたの問いには答えられませんでした。
その子供の死に何か意味があるのかと問われれば、途方に暮れたことでしょう。

 

優れているものが地を這うべきで、そうでない場合は素早く天に召された方がよいと今でも私が考えているとお思いでしょうか。
だとしたら私とて天に召された方がよいのです、そして一人がそのような理由で命を絶ったなら…同様にあなたがその理由から命を絶ったとしても、何の不思議もありません。
だって、優れている人間など居ないのですから。

 

私の外見から骨までを見抜く人は稀です、あなたにも見抜けなかったのです。
寝返りの打てない私が子を宿したら、例え話でも何でもなく私は身体が何分割にも割れてゆく痛みを感じるでしょう。
まさにその痛みのために、逃げ惑う嬰児を腹から引きずり下ろし、灰色に変色した我が子をこの手で抱いたかも知れません。
それがたとえあなたとの子供でも、私はそうせざるを得なかったでしょう。

 

全く同様に、心身が溶け合うという意味に於いては、あなたとなら、私はそのような出来事があってもそれを善いことだと言えるのです。
全く同様に、あなたとなら、私はどのような苦しみも喜びも、意味があると言えるのです。
もしあなたとの間に命が育まれたのならば、その命が、私にとって共感出来ない人格を帯びたとしても、それでも善いことだと言えるのです。

 

あなたに質問されたことに対して、本当の意味で答えましょう。
あなたに出会えたから私は人間の価値を知ったのです。
それまでの私は人間の真価を知らなかったのです、生命の意味を理解していなかったのです。
もしあなたが私の伴侶だったら、私は命を育みたいと思ったでしょう。
そしてあなたが、素晴らしい伴侶に恵まれたことを私は心から祝福しているのです。

 

私はやりたいことだけをいたします。
私は望みだけを叶えます。
だから私は今回の一生では枝葉の最後の一房として生きようと思います。

 

あなたが吐く息、あなたを形作る有機質、切った髪、爪、垢、それらが大気に混ざり雨水となり、海に溶け、地で食まれる頃、私は雨水を飲む雉鳩と目が合うのです。
そのような意味に於いては生命とは、個では完結し得ないのです、雉鳩とてあなたなのです、あなたとて、私の庭に住まうミミズでもあるのです。

 

よって灰色の子供は、私自身でもあるのです、灰色の子供であるところの私が、誰かに自分の存在に何かしらの真実を見つけられたかと問われたらこう答えましょう。
熱風が夕方の雲に渦を巻かせるのを私は見なかった、茂った庭木が私の頬に触れるのも私は感じなかったし、蜜蜂の優しさも私は知ることがなかったが、それでもそれら全ての中に私は今尚宿っていて、同様に生きて、息を吐ききって死んだのだ、これが私の一生だったと私は答えましょう。
意味があると答えましょう。

 

あなたが、尚も音を作り出しているということが私には心強いのです。
一度放たれた音は消えないのでしょう?
一度見た絵は、あなたの内側で花火のように弾けているのでしょう、あなたの知らないところで散っているのです。
私の喜びとはこのようなもので、あなたなしには叶わないものなのです。

 

あなたを好きで居るということは、世界を愛でているという事に他ならないのです、この真実を私は口には出しません。
あなたの前では言いません、あなたを愛しているなどとは言えるはずもないのです、言う必要も無いのです、この想いが決して無意味ではないと知っているのは私一人きりで十分なのです…それだけで世界は十分に光輝くのです。
これは秘密の独り言、あなたに言えないことを真夏の空に呟く、たった一人の時間。