a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

《創作》「今」の制作手順

 

「今」の制作手順をご紹介します。

 

今の空気、今の味、今の景色をかき集め、緩やかに、無限記号を描くように「今」をひとつの球状の物体にします。
「今」が物体になったのを感じ取れたら、その今を、両手でこねていきましょう、少し根気の要る作業です。
「今」というものをこね終えたら、しばらく空気を吸わせ、膨らませます、歌を聴かせるのもよいでしょう。
「今」が空気やあなたの声を吸って勢いよく膨らみ、円形になったら霧吹きで水をかけます…涙でもかまいません…「今」は生き物ですので空気も水分も哀しみや喜びも必要なのです。

 

それが済んだら、水分を含んだ今を、平面に落とし込む要領で、棒で平らに伸ばします。
今は三次元から二次元へ近づきました。
今には沢山の物質、あなたの見た風景、感動した事柄、避けられない哀しみ、などが含まれて七色に輝いております。

 

平らに伸ばされた今は、円形の形を保っています。
平面上の円、そこに切り込みを入れてゆきます。
切り込みはいくつ入れても構いませんが…あなたの思い浮かべた一場面一場面がその切り込みのうちの一つ一つに当てはまると考えてください。
あまり多すぎても描き込むのが大変ですし、今が一場面だけというのも味気ないものです、せめて2~4場面は欲しいところです。

 

さて、私の「今」の風景は以下のようなものです、私は6場面ほどの今を思い浮かべました。
「今」美しいと感じる物事や「今」重要だと感じる肉体的事柄が今なのです。

 

わだつみの神を感じる清掃の仕事
流れる小川の風景
綺麗な家
骨の痛み
骸骨の両親
今を他者に見せる事への高揚感

 

では次に挙げるのは、実は今ではない、今感じがちな情景です。

 

男女の性的融合への憧れや達成感、または渇望
寝返りの打てない長い夜
手術への不安
仕事を終えてしまうことへの哀しみ

 

根源的な肉体の維持に関する事柄や、「今後の」不安などは厳密に言うと「今」ではありません、未来です、別れの哀しみも未来の事です。
不安は「今」ではない事柄ですので、今の中に入れないように注意してください。
憧れも「今」ではありません、今し方したセックスも厳密には既に過去のものです。

 

自分がまさに「今」自分一人で感じている物事が今なのです。

 

それでは「今」に、ケーキを何等分かする要領で数本の切り込みを入れ終えたら…今を描きにかかります。
一発描きでかまいません、切り込みの枠に沿って太線を引き、場面ごとを仕切ってください。

 

その中にあなたの感じる厳密な意味での「今」を描いてください、それぞれの枠にひとつの場面を描いてください。
着色は自由です、精密に描きすぎた場合、色が潰れますのであえて背景色だけで線画のようにするのも綺麗です。
色をつけたいという場合も、隣り合う枠の場面を考慮してください。
…でも考えすぎもいけません、似た色にしても静かで統一性があり良いですが、あえて異なる色同士が隣になるように描いても、「今」がまさに動いているようで面白いでしょう。

 

さあ、「今」は完成しましたか?
一枚の平面の円の中に、様々な場面が見えると思います。
着色せず線画のみの場合、とてもシンプルで古代の模様のように見えるでしょう。
着色した場合、あなたの今はステンドグラスのように七色に光っています、それを見る人の心も七色に染まるでしょう。
今という現象は、小さな曼荼羅だということが見た人にも伝わると思います。

 

あなたにとっての「今」はどのような煌めきを発しているのでしょうか。
あなたにとっての「今」は、何色でしょうか、または極彩色なのでしょうか。
あなたにとっての「今」を、あなたは、まず誰に見せたいと思いますか?
制作は制作中が本番なのです、そして鑑賞者が居てはじめて、あなたの「今」は完成するのです。

 

これにて、「今」の制作手順の説明を終えます、ご静聴ありがとうございました。