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黒い紙(詩)

まだ寝床に居る素裸の時分
黒い大きな紙が
私の視界ギリギリに迫った
それは揺れていて
意外なほど好意的であった

 

黒い紙は私に服として巻き付くのかと思いきや
誰かと私との間に立ち
両者の意志を仲立ちしているかのようだ

 

起床した私は
自分が今しがた恋人と別れたことを知った
あの黒い紙が
私たちの間に挟まり
人間関係上の一時停止を
してくれているのだと素裸で理解した

 

今日
逢うはずだった貴方は
今日
ついに私の匂いのしない布団で
寝ているのだろう
恋人だった貴方よ
黒い紙を
貴方は型紙に使うのかしら

 

貴方も
泣いてなどいないでしょう
私たちが私たちであると感じたのはこれがはじめてなのだから

 

黒い型紙で
私の服を
作ってよと鏡に嘯く

 

恋を着れたら
恋を脱いだら

 

私は新しい肌に
なるために口紅と頬紅を買う
いみじくも女である私の
型紙は元から無い

 

だから
黒い紙に私は

 

次に会ったら
私の服を作ってと
白々しくも
女である文言を
書き残しておくのだ

 

いつか
私たちの間の黒い紙が反転されたときに

貴方が喜ぶことを、と

 

小さく手を振り
一人素裸で眠りに就く
肌寒い失恋の夜