a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

春の霊峰(詩)

 

あの団地に居た小さい頃
ひどく怒られたその後によく
震えながらベランダに出て私は
私にしか見えない山を
夕日を浴び膝を抱え
詣でた

 

春の霊峰は
タライに水を張った
その中に浸してある色とりどりの水晶にのみ内在する
水晶をひとつ
コンクリートに水が滴り灰色がさらに黒ずんでゆくのを尻目に
空気に引き上げて瞳の前にかざす

水晶の中に山脈が
白い頂をこちらに向け
微笑んでいる

 

私は
そこへ行きたい

 

涙が
あふれ出て白い峰をさらに透明にしてゆく

 

西から
降りてくる風は
ついにこの団地まで来て
植林された大木を揺さぶるとまた夕日と共に帰って行く

 

父母の呻き声
猫の交尾

 

それらが薄暗い一階の部屋から
春の泥の中へと
降りて降りてゆき
沢山の虫たちを励ます

 

私の山はこの手の中
私の山は水晶の中
私の山は涙の中
私の山は

 

春の霊峰はどこにも

 

だから山は
いつも白く
いつも
透明である