a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

シャーレ(詩)

 

若き日の母は白衣を着
シャーレという小宇宙に生物の種を撒いて発芽させる仕事をしていた

蛍光灯の白
奥の廊下をさらに
突き進むと動物実験棟に至る

 

ふとした折

と断定できぬ
叫び声がする

 

そのような禍々しい場所のすぐそばで母は
白衣という法衣にその身体を包み
素知らぬ顔でシャーレの世界を見つめていた

 

微生物が蠢く
春の世界では誰もが
母を
神と崇めていた

 

窓の外から光が偶然にも
私に一筋の道を照らし出しているその時
私は

法衣を着た母を選び

彼らとすれ違ったのだった

 

使い捨てられた世界は言った
私たち幾千万億の仏を供養するのだと
彼らが母に言ったので母は祈るようになった

 

透明な使い捨てシャーレは光をそのまま透かして
極小の三千世界をのせ永劫の未来へとひたすらに登ってゆく

 

一方で
幾億度生まれ変わろうとも
私は
母がその身に持つ

たった一つのシャーレに落ちると

 

現在も尚確信している