a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

人形【詩】

小さな箱を用意してそれを周囲の世界に見立てる、そして自分を人形に置き換えた、部屋は明かりが灯っているが四隅には闇が息を潜めている。


私はたまらなくなって人形の四肢を、一本一本ちぎっていった、大きなハサミで右腕、左腕、左足、そして右足、下腹部、首、という風に順々に解体したのだった。
私は、一所に留まれない人間なのかも知れないと思った、常に強烈にどこかへ行きたいと願い、相反するようにその場に地霊となるまで留まりたいと念じているのだった。
だからこそこの作業はやらねばならない儀式だった、私が、本当に私自身であるにはこうするより他に方法は無いのだと私は思った。

 

すべての場所に留まるなんてこと、すべての場所を越えてゆきたいなどということ、それらを実行するにはこうするよりないのだ。

誰か一人きり、どこか一点の場所、たった一つの信念、そういったものが人間という存在を動かすのにはちょうど良い。
一人でなく二人、三人、いくつもの場所への恋、いくつもの願い、それらは一人の人間ではまかないきれない、一人の女には無理な話だ。

 

だから私にはわかるのだ、そういう女がいたとして、本当に彼女の望みを叶えるならば女の四肢を切断して、数多の場所へと移し、それぞれの場所を守るよう念じるより他にないと、私には理解できるのだ、古代の土人形が打ち割られて埋められているのはそういう理由からなのだと私は直感した。

 

きっとそれよりも以前の時代、生身の身体が供養されていただろう、そして昨今に至るまで、そこここに身体は埋まっているのだろう、土の中で目覚めたまま眠っているのだろう、右腕だけが、左足だけが、首だけが、念を発したまま未だに生きているのだろう。

 

私の苦しみを人形にうつした、と私は思ったが、きっと無駄である、カーテンを開けると夕暮れ、葉のすっかり落ちた木の黒い線が影絵の闇へと溶けてゆく。

 

苦しみは消えない、喜んだ分だけ苦しみは消えない、私はあなたを守れない。
あなたは私を知らないのだから、私とて守りようが無いのだ、私は誰も守れない、と私は思っているに過ぎない。

私は苦しみを人形にうつしたいと、願いを人形に託したいと、ただ思っているに過ぎない、私はあなたを私なりに守りたいと、それすら単なる願望なのだと気付かされる、夕暮れの瞬間。