a.o個人ブログ

詩や創作文章、祈りについての考察を個人的に公開しています。

【創作文】笹団子の外側

「過去が圧縮されたように見えるのは、目玉が本当には三次元を認識出来ないのと同じ事だ、目玉は本当に奥行きを認識しているんじゃないんだ、全部平面として受け取っているんだよ、まあ、お前には難しいだろうがな」父はそう言って地図を指さした。「この地図に…

【創作文】夢製の写真

夢の中に僕は居る、そう気付いたとき、自分の好きなことを生み出せるっていつも気がつくんだ。僕が手に持つのは夢製の古びたカメラだった、これで夢を撮るんだ、僕はそう意気込んで石畳の小径を歩き回った、まだ日は高く、空は虹色に輝いている。さっきまで…

【創作】石仏

紅色の数珠の一粒一粒を私は丹念に見た、紅色の珠は珊瑚を模した物で、朱色と乳白色のプラスチックを揺らぐように混ぜ合わせて造られており、夕日が雲に当たって刻一刻と形状を変えているかに見えた。「この数珠の中には時間が込められている」「広大な空の夕焼…

【創作】奉られた過去

小さな炎が冬の最中に燃えているのが見えた、見えた、とは言い難いが見えたとしか言い様がない、私は奇妙な体験をした。 諸事情により詳細は伏せるが、冬に差し掛かる頃、国道をひた走り、巨大河川の源流を越えたあたり、四方を山に囲まれた廃村、その中の一…

【創作】泣いているのは一枚の絵

泣いているのは一枚の絵、それから、遠くの川を隔ててひた走る無数の灯りが見えた、首都高だ、首都高が夜に向かって生えているのが見えた。男は言った、「俺は上手くやれてしまう方だから」、私は黙っていた。私と男の見つめる夜の川は河だった、海の混ざった…

【創作】月明かりの修道士

「夢が入っているのですよ」黒い修道服が目の前で翻り、その人物が踊るのが女には見えた、息を飲んで女もステップを踏む、水をこぼさないように、こぼさないように。「この器には夢が入っているのですよ」修道士は、物わかりの悪い子供を相手に話すように女に言…

【創作】船

計算が合わない、何度測っても計算が合わない、でも現に組み立ては進んでいる、船を組み立てる物理的スペース、物理的材料は揃っていてどうやればよいかの手順も私は知っている。しかし計算が合わない、計算上ではこの船は組み立てられない、しかし現に私は…

【創作】各駅停車

「各停しか止まらないんだ、いや、快速も止まったな、ううん…そうだ、区間急行でも止まる…かもしれれない、いやどうだったか?ともかく急行や準特急、特急には乗るなよ、最果ての地まで飛ばされるからな」電話越しに聞く老人の声はしゃがれている、元々鼻炎や…

【創作】アカペラ少年

ステージの中央に立つアカペラ少年はにこやかに唄っていた、たった一人の男子中学生に大勢の拍手が浴びせられる、アカペラ少年は妙に場慣れした様子でお辞儀をした。奥様方、ご静聴ありがとうございます、とでも言いたげに優雅に礼をした。制服のスカートが…

【創作】俺は君が嫌いだ

「貴方は綺麗だから」って言われるのが実は俺は大嫌いなんだ、でも昔から言われるんだ俺は、貴方は綺麗だからって何度も何度も、幾人もに言われ続けてるんだ。その言葉を投げかけられると、心の何処か芯の部分で火花が散るんだ、俺にしか見えない火花が散るん…

【詩】夢の中の夢

襖を開けて開けてまた開けてまた次の夢へ夢の道は何重にも折り重なっていて時に険しい終わった夢は一枚の折り紙そして次の折り紙の上に降り立つのよ私は ねえもう夢から覚めたいのだけれど目が覚めてもまた夢とうとうこの布団まで戻ってきたと思ってもそうね…

【詩】白い白い虫

身体を横たえ、口に食物を含みながら眠る身体が白く白く丸まってきたのだ自堕落な日々は幾日続いたろうかはて、秋の空は澄んでいると記憶していたがどうにも最近はいつまでもぬるくて暖かくてずっと夜のようだ土の中のようだ 眠りに落ちる瞬間 暗い穴を抜け…

【詩】私は錆びた銀の針

私は錆びた銀の針、海に揺蕩う銀の針地獄でもがく銀の針、一人で唄う銀の針あまりにも美しい夢をみたので泣いています涙は塩水に溶け私の身体も塩水に溶けています 夢の中の海は水面が太陽の光に乱反射し眩しくて目を開けていられないほどでしたいくつもの潮…

【詩】南無妙法蓮華経

地獄に落ちるぞ地獄に落ちるぞ法華経を唱えなかったら地獄に落ちるんだぞだからこの手を掴むんだ今すぐ掴んだら離してはならない末代まで伝えるんださぁ今すぐ唄え 南無妙法蓮華経全力で唄え南無妙法蓮華経 仏法を喉を震わせ唱え続けるのだ自らの血が遂に遂…

【詩】骨になったあなたを

骨を舐めさせてよあなたの骨を骨の粉を粉になったあなたを舐めさせて食べさせてよあなたを骨になったあなたを塵になったあなたを 磁器のお鍋を空焚きしたら火葬場の匂いよ火葬場の焼却炉の扉は黒くて両側に小さな明かりが静かに灯っているのそして炉に入る者…

《創作文》窓辺の死体

社会全体が個人全体の幸福と同等に至るにはあとどのくらいの時間が必要だろうか?時間など必要ないというのは欺瞞である。肉体を纏っている以上、時間も、守られるべき個人の領域も存在する。これは貧富の差が無くなるということと似ているが異なる、どちら…

■と▢

心の中にこの■があるとき、前が見えなくなるのよ。心の中にこの■が溢れているとき、前も後ろも横も見えなくなるのよ。不思議とね、上だけはいつも晴れているの、だけれど足にもこの■、黒い重りがついているから空は飛べないの、肉体を捨て去らない限り空は飛…

《創作文》夜の浜辺で電話帳を

僕は夜の浜辺で電話帳を燃やしていた、バイクは道路の脇に停めてある、地元の浜辺には今、僕一人しか居ない、夏場はここに幽霊が出るという理由で人が探索しに来たりもするけど冷え冷えとした夜には幽霊を含めて誰も来ない。季節はもう晩秋なのに潮風は生ぬ…

《創作文》聖なる川の縄梯子

花嫁を攫わねばならない、婚礼の夜はもう二度と来ない。徴をつけられてしまってからではもう遅い、私はあの娘を取り戻さねばならない、あの娘の出自を考えれば自明の理だ。出自を一生隠し通せるはずがない、本来夫となるべきは私なのだから。聖典の示した幸…

《創作文》Maybe Angels

褐色の肌をした老婆は道路へと一歩また一歩と踏み出していた、売春宿へと続く干からびた道を老婆はよたよたと歩き、一つ一つ、投げ捨てられたゴミを丁寧に拾っては袋へと入れていた、その袋からは拾ったゴミがぽろぽろとこぼれ落ち、再び路上へ転がっていっ…

幽霊(散文)

よりにもよってこんな日に公演かあいつ、舞台の上を確かに跳びはねて歌ってたなあお客さんにも役者の顔で接してた、この世界の生き物なんだなあいつはあいつはあいつ自身でいるよりも他の誰かを演じる方が力の湧く性分なんだそういう奴だよあいつは、この世…

【詩】女同士

最後はみんな笑い話になるねえ辛かったことも笑えない話も全部笑い話になるねえ仲悪かった奴との事すら笑えるんだからあんなに愛して愛して愛し抜いた男のことすら最後には笑い話になっちゃうんだからやってらんないよねえ笑っちゃうよねえ女同士ってのはこ…

【創作文章】落ち込んでも描いて

「正直ね、結構参ってるの」女は真正面を向いて言った、女の前には水盤が置かれて、その内側には木と家の模様が浮かんでいた。女は水盤に向かって話していた、誰も聞くはずのない会話を女は一人でしていた、開いた窓からは金木犀の香りだけが冷たい空気と共に…

【詩】鏡の舞台

鏡の舞台に私は今立っていて自分に問うの鏡に映った自分を私は私だと言って直視することが出来るかしら?舞台に上がった自分をあなたは自分だと言って直視することが出来るかしら? 私からするとあなたは面白い面白いあなたの居るその劇団も面白いその劇団の…

【詩】演劇

演劇というものは何故世の中に存在しているの?演劇というものを初めて創り出した人は一体何を考えていたの? 綺麗な世界が見たかった?現実の人間関係というものに辟易したからこそ舞台を世界に見立てそこに理想世界を見いだしたかった? 誰かに美しさを見…

【詩】命に裏切りはない

命に裏切りは無い裏切りは起こらない誰かを信じているというのはその実誰かに素直に心を開きたいというその自分の気持ちに対してただ正直で在るということ それはとても素晴らしいこと次の世界へと続く扉を開くこと だからその誰かが自分の思い描く理想とは…

《創作》真夜中の大学に僕は今

真夜中二時の大学に僕は今、忍び込んでいる。大丈夫、授業の後、あの窓を空けておいたから、僕は荷物を背負って校舎の裏側に回り、そこから二階までよじ登る。自転車置き場を足場にすればすぐに僕の制作場所まで辿り着く。肩に背負った袋の中には木材や、そ…

【詩】赤い骸骨

赤い二体の骸骨が尋ねるお前には出会うべき人はいないのかい?お前は何故その人に向き合わなかったのかい?お前は何故その人以外の男に自分の世話をさせて平気でいるんだい?お前は何故肉体の若い時にその人を懸命に探そうとしなかったのかい?お前にせっか…

【詩】俺と言うあなたへ

俺 って今日のあなたは言うのですね、3年経ってはじめて聞きました、一体どういう風の吹き回しでしょうか、この吹き荒れる風のせいでしょうか。実際の時間は10分しかないので、数枚の絵だけを一秒で見せるに留めます、この一秒に私の一ヶ月の時間が込めら…

【散文詩】こんな仕事

「こんな仕事」と言う老婆に私は言う。「こんな仕事とあなたは言うけれど」と私は言う。「貴女にとってのこんな仕事は、私にとっては今までのどんな仕事よりも働く喜びに溢れていますよ」と私は言う。「貴女にとってのこんな仕事は、私には、行うのが奇跡のお仕事な…