大熊あれいブログ

絵画やイラスト、詩や独白文章を公開しています。不定期です。

【詩】日々の詩

雨乞いをしているよ(詩)

雨乞いをしているよ。 日差しの中は危険だ、木漏れ日もいけない、幻覚を見るから。涼しい風の中をてくてく歩き回って、あの世まで続いている歩行会の人々の列をくぐり抜け、妙だなと思った、地面が光を帯びている。光っているのは真昼の太陽のはずなのに、地…

無題(詩)

湿った夜の山道で自家用車に乗せてもらったああ女の人の匂いがするどうして? 首つりしようとしてここに来たけどムカデが身体を這うから帰ることにしたのという私と女房を殺したばっかりだっていう男の人の微笑 つい食べたくなって食べちゃったのもう何匹食…

私は卵を産みました(詩)

私は卵を産みました 魂がはじめて私の身体を口から膣に至るまでちゃんと通りぬけてゆくのを私は確かに感じたのです 白い階段を上がりきって絵が完成したのを知ったそのとき絵に膜が張り丸くなるのを私は見ました ああ 絵は卵なのですね私はこれからも卵をい…

赤褌の人(詩)

真っ赤と白の渦巻き模様の風車 ああいう色の声を眠りながら私は出したの夜半に 夢の中で警告を発したこれ以上こっちに来ないで 赤い褌を締めて座しているあの人の頭部に巨大な直感が今触れている 真っ赤と白の渦巻き模様の風車は信じられないほどの速度で回…

百足(詩)

脚をまだ動かしている百もあろうかという脚を青い青い青い蹄鉄の施された脚を あなたたち水の穴を抜けて我らは楽園に来たといった体だった ぼんやり光るこの風呂場の排水溝は蟲たちの地下世界からはさしずめ 月の光みたいに見えたはず 月世界は残酷だそこに…

土塊(詩)

土塊だ側面や過去は皆土塊だ 誰かが追求した物事のその側面は土塊なのだ 側面に向かって伸びてきた親切側面に向かって投げかけられる罵倒 あの人の崇高な意志も紡ぎ出した言葉も音も 凍てつく夜の部屋の内外みたいなもの 至らない部分無下にした視線 あの人…

声(詩)

外で誰かの声がする幻かも知れぬ鳥を追う見知らぬ男の声がする ふいに 芸術の神様らしき何か畏れを体現した何かが窓辺に立ち現れてこちらを観ているのを感じた 二階の手すりに縄をかけ夕景に糞尿を垂らして揺れる自分を想像して安心している私に それは言っ…

寡の唄(詩)

稲穂よ瑞穂よ 女よ絵の題材よどうかここに居て でも縋るとお前達は逃げて行く骨の髄まで恐ろしいほどに女だねお前達は私の不甲斐なさを責めてすらくれない力をかけてやれない私を信頼できないのも無理からぬ話だ 力を振るってすらくれない男を嘘つきと罵るこ…

かたつむりの恋(詩)

かたつむりは雄雌同体互いに 口のそばの生殖器を出し入れしながら見つめ合って交尾している あなたの言葉を観たときに景色が 恋の矢とそれを言うのかも知れぬ 私は矢をつがえてあなたに突き刺そうとしている 矢の先を尖った生殖器を私は舌でたっぷりと舐め唾…

髑髏(詩)

歯からほころびがはじまりぐらぐらし血が出て汚濁した匂いと共に抜けてゆくさようなら歯よ私の歯よ 膝が痛んでいつのまにか曲がってはやく歩けなくなり緩慢な両足は肉塊となるさようなら私の脚たち私の膝 手がうまく反らなくなって言葉を打つのも手織るのも…

銀製のアイマスク(詩)

古代の墓から出土したという銀製のアイマスクがやだこっちを見てるの 砂漠の地方から埃まみれのままやってきた視点 瞳の部分には細かな針で刺した穴が無数に開いている まるで銀色の星空でも見ているように真昼の光が暗い墓室の扉を透かして銀製のアイマスク…

曼荼羅図(詩)

胎蔵曼荼羅と呼ばれる仏達の集合地図が壁面に大きく展示されていた それを見る私たちは暗闇にひしめき合って 人間の群れもまた俯瞰したら一つの曼荼羅図のように見えるだろう 電子回路のように仏達が座しているこの流れに力を送ると世界が発動する ネットの…

黒い紙(詩)

まだ寝床に居る素裸の時分黒い大きな紙が私の視界ギリギリに迫ったそれは揺れていて意外なほど好意的であった 黒い紙は私に服として巻き付くのかと思いきや誰かと私との間に立ち両者の意志を仲立ちしているかのようだ 起床した私は自分が今しがた恋人と別れ…

春の霊峰(詩)

あの団地に居た小さい頃ひどく怒られたその後によく震えながらベランダに出て私は私にしか見えない山を夕日を浴び膝を抱え詣でた 春の霊峰はタライに水を張ったその中に浸してある色とりどりの水晶にのみ内在する水晶をひとつコンクリートに水が滴り灰色がさ…

シャーレ(詩)

若き日の母は白衣を着シャーレという小宇宙に生物の種を撒いて発芽させる仕事をしていた 蛍光灯の白奥の廊下をさらに突き進むと動物実験棟に至る ふとした折何と断定できぬ叫び声がする そのような禍々しい場所のすぐそばで母は白衣という法衣にその身体を包…

鶴の児(詩)

鶴という鳥が実在するのかどうかを知るそれよりも前から 私はその鳥の模様を指でなぞっていた 母が仏壇に供えていた真鍮の水入れに 刻まれた鶴を 私は薄暗い畳の部屋で一人きり 愛でていた あなたは 今悠々と冬空を飛んでいるのかしら それともあなたは 鶴の…

腱鞘炎

人間は楽器だ 右手の弦は弧を描いて、送電線を見つめたままぴんと張りつめている これ以上力をかけたら、霜柱と一緒に、午後には空気に弾けてしまう 手の甲に筋肉は無い、ただ弦が張られているだけなのだ、指先から音を奏でるため、それだけが手の役割だと、…

わかったって言ってくれ

伝言の伝言の伝言は、微笑みながら網を張って、年末の獲物を待っていたどうにも足が動かないと思ったら、私は身体をすっかり絡め取られていたらしい 君の笑顔のツケを私は払っている私の当たりの強さと君の物腰の落差に驚いてしまった分を加算して相手は支払…

方眼用紙【宗教】

人を殺した事がある、私は11歳だった、表面上は机に向かい、白地に青の線が引かれた美しい方眼用紙を、汚す要領で文字を記していた、人を殺す物語をその時の私は書いていた。 方眼用紙上での私は東欧に居た、寒村から始まったこの血筋は未だ寒村に留まり続…

首都高速の高架下【詩】

首都高速の高架下、あのコンクリート色の場所は、大きな川辺のすぐそばにある。 高架下と交差するように架けられた橋の片隅。虹の大橋と看板がつけられたあの橋の、そのすぐそば、真上には首都高の裏側がむき出しになっている風の吹きすさぶ場所、そこに木は…

寒いので夕日を食べる【詩】

寒いので夕日を食べる、もうすぐ冬至なのだ、身体には日の光を蓄えなきゃならない、地面に属する構成のものは、太陽が少なくなると脆くなってしまう、それは人間とて同じだ。 橙色のもので代用できる、ぎっしり詰まった夏の身体が恋しい、柔らかく湧き出る春…

芝生で覆われた土手一面に、霜が降りて光っている【詩】

芝生で覆われた土手一面に、霜が降りて光っている、そんな朝はただひたすらに青く、湖に街ごと沈んでしまったかのようだ。この青い空気を羽に内包しているらしい白鷺が、音も無く飛翔する、そのまままっすぐ、あの橋の下まで。 あの橋の下で私は一晩中過ごし…

ポエム【詩】

空気の澄んだ午後に、バスに乗っていて窓越しに外を見たら、落ち葉の舞い散るただ中に、妙に好みの男が立っていたので思わず私は凝視した。 意外なほど温度を感じる冬の日差しのせいか、マフラーを取りさって顔を上げた彼が、なんとこちらを見つめ返してきた…

人形【詩】

小さな箱を用意してそれを周囲の世界に見立てる、そして自分を人形に置き換えた、部屋は明かりが灯っているが四隅には闇が息を潜めている。 私はたまらなくなって人形の四肢を、一本一本ちぎっていった、大きなハサミで右腕、左腕、左足、そして右足、下腹部…

月面球【詩】

ラブホテルのエレベーターの中 文字盤のあたりに月面の壁紙 どうやら 辿り着けない場所へ行くらしいねと笑い合う 誰がこんなことを あなたの 髪の匂いがわかるほどそばへ 月はその実トンネルの向こう側の光なのだよ あれは球体なのではなくて 空洞なのだよ …

カラス【詩】

ゴンゴンと窓を叩く音がする、朝、今まさに出かけるというその瞬間に私を呼び止める声がする、どこからだ?いつもと音の方角が異なる気がする、そう、いつも来るのだ、どこか紫がかった黒い翼、キョロキョロとあたりを覗うせわしない動作、ああ、あの子だと…

【詩】腕時計は海に落ちたの

腕時計は海に落ちたの、シーツのさざ波、紺碧の水平線、ベッドの真横には夕焼けみたいなオレンジの灯り 掃除用具は床に慎ましく座している、私は起立状態、いつもならば小走りしながら数時間が過ぎる真昼間のホテル さっきからもう10分、実は一部屋の丸半分…

【詩】あなたとこうして互いの毛先を

暗い室内、アルコールの匂い、向かい合って座るあなたと私。 ほんの少しずつ距離を縮めている、これは物理的、心理的な話。 髪の毛の先、というのは最早生きているとは言い難い部分で、局所的には死んでいる状態である。 それなのにどうして、あなたとこうし…

【詩】右手に積もる黄色いスポンジ

屋根を打つ雨音、雨音、雨音、土手を越え田畑まで避難してきた鴨の、どこか機械的な鳴き声。 私は枕をちぎっている、明日は雨の中歩くのだ、台風の中歩くのは、歩いてさえしまえば気持ちよいのではないか。 右手に積もる黄色いスポンジ、低反発のスポンジ製…

【詩】極彩色のガラスの傘

「あなた方の間では、聖徒にふさわしく、不品行も、どんな汚れも、またむさぼりも、口にすることさえいけません。また、みだらなことや、愚かな話や、下品な冗談を避けなさい。そのようなことは良くないことです。むしろ、感謝しなさい。」 私を見ながら、牧師…