a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

☆創作文

【創作】船

計算が合わない、何度測っても計算が合わない、でも現に組み立ては進んでいる、船を組み立てる物理的スペース、物理的材料は揃っていてどうやればよいかの手順も私は知っている。しかし計算が合わない、計算上ではこの船は組み立てられない、しかし現に私は…

【創作】各駅停車

「各停しか止まらないんだ、いや、快速も止まったな、ううん…そうだ、区間急行でも止まる…かもしれれない、いやどうだったか?ともかく急行や準特急、特急には乗るなよ、最果ての地まで飛ばされるからな」電話越しに聞く老人の声はしゃがれている、元々鼻炎や…

【創作】アカペラ少年

ステージの中央に立つアカペラ少年はにこやかに唄っていた、たった一人の男子中学生に大勢の拍手が浴びせられる、アカペラ少年は妙に場慣れした様子でお辞儀をした。奥様方、ご静聴ありがとうございます、とでも言いたげに優雅に礼をした。制服のスカートが…

【創作】俺は君が嫌いだ

「貴方は綺麗だから」って言われるのが実は俺は大嫌いなんだ、でも昔から言われるんだ俺は、貴方は綺麗だからって何度も何度も、幾人もに言われ続けてるんだ。その言葉を投げかけられると、心の何処か芯の部分で火花が散るんだ、俺にしか見えない火花が散るん…

《創作文》窓辺の死体

社会全体が個人全体の幸福と同等に至るにはあとどのくらいの時間が必要だろうか?時間など必要ないというのは欺瞞である。肉体を纏っている以上、時間も、守られるべき個人の領域も存在する。これは貧富の差が無くなるということと似ているが異なる、どちら…

《創作文》夜の浜辺で電話帳を

僕は夜の浜辺で電話帳を燃やしていた、バイクは道路の脇に停めてある、地元の浜辺には今、僕一人しか居ない、夏場はここに幽霊が出るという理由で人が探索しに来たりもするけど冷え冷えとした夜には幽霊を含めて誰も来ない。季節はもう晩秋なのに潮風は生ぬ…

《創作文》聖なる川の縄梯子

花嫁を攫わねばならない、婚礼の夜はもう二度と来ない。徴をつけられてしまってからではもう遅い、私はあの娘を取り戻さねばならない、あの娘の出自を考えれば自明の理だ。出自を一生隠し通せるはずがない、本来夫となるべきは私なのだから。聖典の示した幸…

《創作文》Maybe Angels

褐色の肌をした老婆は道路へと一歩また一歩と踏み出していた、売春宿へと続く干からびた道を老婆はよたよたと歩き、一つ一つ、投げ捨てられたゴミを丁寧に拾っては袋へと入れていた、その袋からは拾ったゴミがぽろぽろとこぼれ落ち、再び路上へ転がっていっ…

【創作文章】落ち込んでも描いて

「正直ね、結構参ってるの」女は真正面を向いて言った、女の前には水盤が置かれて、その内側には木と家の模様が浮かんでいた。女は水盤に向かって話していた、誰も聞くはずのない会話を女は一人でしていた、開いた窓からは金木犀の香りだけが冷たい空気と共に…

《創作》真夜中の大学に僕は今

真夜中二時の大学に僕は今、忍び込んでいる。大丈夫、授業の後、あの窓を空けておいたから、僕は荷物を背負って校舎の裏側に回り、そこから二階までよじ登る。自転車置き場を足場にすればすぐに僕の制作場所まで辿り着く。肩に背負った袋の中には木材や、そ…

《創作》平手打ち

「いつも両目がすごく奥のほうにあるのよ、洞窟の中から明るい日差しを見ているみたいな感じなの、つまり外界というものが私には存在しないと言ってもいいわ、とても奇妙な感じよ、でもこれを奇妙だと思っているということはね、私にとって通常であるという状…

《創作》表皮越しの世界

女は一人、草むらに横たわっていた、月夜の脱皮は困難だったが肌色の表皮は徐々に剥がれていった、空の遠くでは雷が幾度も光を放っていた、不思議なほど無音だった。表皮は剥がれ落ちたその瞬間にはまだ女自身に属していた、虫たちもそれを知ってか女には一…

《創作》あの子の為にすべき事

とある一羽の鳩は住処を見回した、時折吹き付ける強烈な潮風はここへは入ってこない、開発工事中の鉄筋建築物の内側に鳩は居た。鉄の一部は既に錆びかかっていた、遠くに赤い光が点滅し、巨大な紅白のクレーンが天までの階段を厳かに作っていた。鳩はどこか…

《創作》偶発性の美

女は呻いていた、女の身体からは木の芽が、新芽がいくつも生え、天の眼球に向かって手を伸ばそうとしていた。新芽が伸びる度に女の身体から脂肪が減り、あばらが浮いた、女は料理ばさみで自らの新芽を剪定したが到底追いつかなかった。女にとって生きるとは…

《創作》地下牢(グロ注意)

地下牢に男が一人、座って何やら言葉を発していた、蝋燭だけが男を静かに照らしていた、その小さな炎だけを男は頼り、ただひたすらに人の姿を求めていた。朝…といっても暗がりに何日も閉じ込められている男には解らなかったが…番兵が牢獄の入り口の、ちょう…

《創作》鏡の中の骸骨(美容整形、コンプレックス)

その日の朝、まだ日が昇る前、鏡の中に骸骨が居た、そして女を見据えてこう言った。「ねえ、私を見て、死の匂いや醜さを見て、私の死の気配や醜さを吐き出してみてよ」女は断りたかった、考えただけでも億劫であった、だが骸骨は女の内部に宿って暴れ始めた、…

《創作》幸福について

女は煙の匂いを嗅ぎながら穂が金色に変化してゆくのを見た、それから夕方になり、線香花火をした、宇宙が砕けて土の地面に楽しそうにぽたぽたと落ちた。 幸福とは何かを考えるには時間が足りなかったが、幸福のただ中へ行くのに時間は要らなかった。幸福とは…

《創作》夢のバルセロナ(愛人との逃避行)

バルセロナに住み始めてから半年が経った、身体を構成する空気や有機質が、いよいよこちらの土地の生き物へと自分を変化させてゆくのを日々感じていた。日当たりの悪いこの部屋にももう慣れてしまった、だって外に出ていれば夏は夜まで日が差しているのだ、…

《創作》墓守(愛人との逃避行へ行かない理由)

その女にとって最も正確な職業は墓守だった、女は毎日古代墓のある裏山へと手を合わせた、祈っていたのでもなく願いをかけていたのでもなく、ただそうすることが女のつとめだったのだ。女は墓所のすぐ側の土地へ招かれて住んでいた、その土地の以前の持ち主(…

《創作》人造湖

水盤の中に涙が落ちた、涙は幾つもの輪を描きながら水の中に溶けていった。早朝の庭に出しておいた水盤には木々たちの霊気が漂っていた。「宇宙はこうして始まったのね」女は微笑んで庭木の葉を一枚ちぎって水盤に浮かべた、葉は静かに揺蕩いながら旅に出たよ…

《創作》占い

四柱推命という占いがある、とある女は、占いと呼ばれるものをあまり好ましく思っていなかったが、この占いはどこか、信用していた。占いを信用する、というのは博打を信用するのとほとんど同義である。つまりその女は博打を信用していた、しかし信頼はして…

《創作》レモネード

意味が通じなければやっていることのほとんどは、文字通り意味の無い行為で、独善的なものにしかならないだろうね。言葉っていうのはさ、意味を通じさせる為のものなんだ、同じ言葉を喋っていてもほとんどの場合言葉の真意なんか通じてはいないのさ。その点…

《創作》鈴虫の音

田んぼには鋭利に光る錫色の雀よけの帯が、穂をちょうどかすめるほどの高さに張り巡らされていた。上から見るとそれは巡回路を示す柵のようにも見えた、鬼さんこちら、手の鳴る方へ、案内に従って散策する果てしない迷路のようでもあった。鋭利に光る雀よけ…

《創作》鳥肉

僕は楽園に居るのをやめてしまった、大体10年前に僕はその庭園から抜け出て、以来外側から楽園を見ていた。内部の構造は迷路のようになっていて、手をついて廻っても楽園の中心部には決して辿り着けないのだ。かと思うと、何の自覚もなしに庭園の中心部に居…

《創作》快楽依存症

注射器を手に持ち、女はどんよりとした夏の午後の部屋の中で、ただ一人、汗ばんでその内部に光を吸入させた。色とりどりの世界の素がいかにもなプラスチック製の小さな容器の中に収まってゆくのが見えた。「100本か200本くらい欲しいわね、1000本あったってい…

《創作》降霊術

雅歌は響き続け、皮膚の内外では常に、絶えることのない婚礼の宴が繰り広げられている。 女は円形のテーブルの一席に座して居た。物理的な意味で言えば、それはテーブルの四分の一に相当した、だが魂たちを呼び寄せ、対話するにはそれ以上の面積は必要がなか…

《創作》芝の根の国

女は庭の芝を剥がしていた、どこか凶悪な様相の、腰の高さよりも大きいシャベルを深く土に埋め込ませては、呼吸と共に掘り起こした。芝の根の国は文字通り根絶やしにされていった、剝き出しの土には多くの生き物が右往左往し、嘆いていた。蜩が鳴いた、女に…

《創作》狐につままれた日

薄緑色に統一された巨大な建物中に男の喚き声が響き渡った、皆騒然として声の発信源である男を見ていた。「文句があるなら警察を呼べ!」男は尚もそう叫び、その場であぐらをかいた。 女はそのすぐ側を通り過ぎた、驚くべき事に、女は考え事に夢中で男が叫んで…

《創作》庭で死にたい(汚濁注意)

女は朝露に濡れた庭木に手で触れ、まだ涼しい風に身を任せ、誰も見ていないのをいいことに素足で芝生を踏んだ。その柔らかい感触に静かに全身で歓喜し、女は微笑んだ、庭で死にたいと思うほどに女は朝の庭が大好きだった。如雨露に水を入れて低木の根元を湿…

《創作》午前三時の奇跡

彼女のしようとしていた事が何なのかは僕にはよく理解出来なかったけれど、ともかく彼女は懸命に、午前三時の教会で使命を果たそうとしていた。彼女は命綱なしで巨大な聖母子像のあの金の台座まで登っていた、僕は息を飲んで彼女を見ていた。声をかけたら彼…