a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

☆創作文

【創作文】振り子の世界

影の子は色彩の無い世界で目覚めた、目覚めたその瞬間から影の道筋が見えた、行かなくては…影の子は歩き出した。自分の発する言葉が意図せず谺する事があった、気をつけよと影の長老に言われ、影の子は素直に頷いた。影の世界の振り子は人間の世のそれよりも…

【創作文】地底薬局

「終わらない音楽をひと匙、虹色宇宙の卵の黄身を50個、今という時間を砕いて粉にしたものを…そうだねえ、瓶詰めにして何本かあたしに持ってきて頂戴、まず、それらを量る秤が必要だけれど」 私の症状は深刻だった、見るに見かねた地霊たちが教えてくれたの…

【創作文】影絵の会話

いつもの駅前、山を穿って作った人工の街に僕は住んでいる、僕はたまに思う、この街には影が居ると。土曜の夕暮れ、この辺鄙な駅の銅像の目の前に二人の男女が腰掛けていた、冬の風が山に向かって吹きすさぶ中、この二人の男女は何やら懸命に話している、宗…

【創作文】虹色の鶴

虹色の鶴が上空を舞っているのが見える、鉛色の音が部屋を満たしている、静物はただそこに在る、陽光が降り注ぐ窓辺で私は、鉛筆を走らせ動かぬ物を画用紙に写し取っている。画用紙に物が実在するようになれば、それは「良いデッサン」になる。「作品」には至ら…

【創作文】笹団子の外側

「過去が圧縮されたように見えるのは、目玉が本当には三次元を認識出来ないのと同じ事だ、目玉は本当に奥行きを認識しているんじゃないんだ、全部平面として受け取っているんだよ、まあ、お前には難しいだろうがな」父はそう言って地図を指さした。「この地図に…

【創作文】夢製の写真

夢の中に僕は居る、そう気付いたとき、自分の好きなことを生み出せるっていつも気がつくんだ。僕が手に持つのは夢製の古びたカメラだった、これで夢を撮るんだ、僕はそう意気込んで石畳の小径を歩き回った、まだ日は高く、空は虹色に輝いている。さっきまで…

【創作】石仏

紅色の数珠の一粒一粒を私は丹念に見た、紅色の珠は珊瑚を模した物で、朱色と乳白色のプラスチックを揺らぐように混ぜ合わせて造られており、夕日が雲に当たって刻一刻と形状を変えているかに見えた。「この数珠の中には時間が込められている」「広大な空の夕焼…

【創作】奉られた過去

小さな炎が冬の最中に燃えているのが見えた、見えた、とは言い難いが見えたとしか言い様がない、私は奇妙な体験をした。 諸事情により詳細は伏せるが、冬に差し掛かる頃、国道をひた走り、巨大河川の源流を越えたあたり、四方を山に囲まれた廃村、その中の一…

【創作】泣いているのは一枚の絵

泣いているのは一枚の絵、それから、遠くの川を隔ててひた走る無数の灯りが見えた、首都高だ、首都高が夜に向かって生えているのが見えた。男は言った、「俺は上手くやれてしまう方だから」、私は黙っていた。私と男の見つめる夜の川は河だった、海の混ざった…

【創作】月明かりの修道士

「夢が入っているのですよ」黒い修道服が目の前で翻り、その人物が踊るのが女には見えた、息を飲んで女もステップを踏む、水をこぼさないように、こぼさないように。「この器には夢が入っているのですよ」修道士は、物わかりの悪い子供を相手に話すように女に言…

【創作】船

計算が合わない、何度測っても計算が合わない、でも現に組み立ては進んでいる、船を組み立てる物理的スペース、物理的材料は揃っていてどうやればよいかの手順も私は知っている。しかし計算が合わない、計算上ではこの船は組み立てられない、しかし現に私は…

【創作】各駅停車

「各停しか止まらないんだ、いや、快速も止まったな、ううん…そうだ、区間急行でも止まる…かもしれれない、いやどうだったか?ともかく急行や準特急、特急には乗るなよ、最果ての地まで飛ばされるからな」電話越しに聞く老人の声はしゃがれている、元々鼻炎や…

【創作】アカペラ少年

ステージの中央に立つアカペラ少年はにこやかに唄っていた、たった一人の男子中学生に大勢の拍手が浴びせられる、アカペラ少年は妙に場慣れした様子でお辞儀をした。奥様方、ご静聴ありがとうございます、とでも言いたげに優雅に礼をした。制服のスカートが…

【創作】俺は君が嫌いだ

「貴方は綺麗だから」って言われるのが実は俺は大嫌いなんだ、でも昔から言われるんだ俺は、貴方は綺麗だからって何度も何度も、幾人もに言われ続けてるんだ。その言葉を投げかけられると、心の何処か芯の部分で火花が散るんだ、俺にしか見えない火花が散るん…

《創作文》窓辺の死体

社会全体が個人全体の幸福と同等に至るにはあとどのくらいの時間が必要だろうか?時間など必要ないというのは欺瞞である。肉体を纏っている以上、時間も、守られるべき個人の領域も存在する。これは貧富の差が無くなるということと似ているが異なる、どちら…

《創作文》夜の浜辺で電話帳を

僕は夜の浜辺で電話帳を燃やしていた、バイクは道路の脇に停めてある、地元の浜辺には今、僕一人しか居ない、夏場はここに幽霊が出るという理由で人が探索しに来たりもするけど冷え冷えとした夜には幽霊を含めて誰も来ない。季節はもう晩秋なのに潮風は生ぬ…

《創作文》聖なる川の縄梯子

花嫁を攫わねばならない、婚礼の夜はもう二度と来ない。徴をつけられてしまってからではもう遅い、私はあの娘を取り戻さねばならない、あの娘の出自を考えれば自明の理だ。出自を一生隠し通せるはずがない、本来夫となるべきは私なのだから。聖典の示した幸…

《創作文》Maybe Angels

褐色の肌をした老婆は道路へと一歩また一歩と踏み出していた、売春宿へと続く干からびた道を老婆はよたよたと歩き、一つ一つ、投げ捨てられたゴミを丁寧に拾っては袋へと入れていた、その袋からは拾ったゴミがぽろぽろとこぼれ落ち、再び路上へ転がっていっ…

【創作文章】落ち込んでも描いて

「正直ね、結構参ってるの」女は真正面を向いて言った、女の前には水盤が置かれて、その内側には木と家の模様が浮かんでいた。女は水盤に向かって話していた、誰も聞くはずのない会話を女は一人でしていた、開いた窓からは金木犀の香りだけが冷たい空気と共に…

《創作》真夜中の大学に僕は今

真夜中二時の大学に僕は今、忍び込んでいる。大丈夫、授業の後、あの窓を空けておいたから、僕は荷物を背負って校舎の裏側に回り、そこから二階までよじ登る。自転車置き場を足場にすればすぐに僕の制作場所まで辿り着く。肩に背負った袋の中には木材や、そ…

《創作》平手打ち

「いつも両目がすごく奥のほうにあるのよ、洞窟の中から明るい日差しを見ているみたいな感じなの、つまり外界というものが私には存在しないと言ってもいいわ、とても奇妙な感じよ、でもこれを奇妙だと思っているということはね、私にとって通常であるという状…

《創作》表皮越しの世界

女は一人、草むらに横たわっていた、月夜の脱皮は困難だったが肌色の表皮は徐々に剥がれていった、空の遠くでは雷が幾度も光を放っていた、不思議なほど無音だった。表皮は剥がれ落ちたその瞬間にはまだ女自身に属していた、虫たちもそれを知ってか女には一…

《創作》あの子の為にすべき事

とある一羽の鳩は住処を見回した、時折吹き付ける強烈な潮風はここへは入ってこない、開発工事中の鉄筋建築物の内側に鳩は居た。鉄の一部は既に錆びかかっていた、遠くに赤い光が点滅し、巨大な紅白のクレーンが天までの階段を厳かに作っていた。鳩はどこか…

《創作》偶発性の美

女は呻いていた、女の身体からは木の芽が、新芽がいくつも生え、天の眼球に向かって手を伸ばそうとしていた。新芽が伸びる度に女の身体から脂肪が減り、あばらが浮いた、女は料理ばさみで自らの新芽を剪定したが到底追いつかなかった。女にとって生きるとは…

《創作》地下牢(グロ注意)

地下牢に男が一人、座って何やら言葉を発していた、蝋燭だけが男を静かに照らしていた、その小さな炎だけを男は頼り、ただひたすらに人の姿を求めていた。朝…といっても暗がりに何日も閉じ込められている男には解らなかったが…番兵が牢獄の入り口の、ちょう…

《創作》鏡の中の骸骨(美容整形、コンプレックス)

その日の朝、まだ日が昇る前、鏡の中に骸骨が居た、そして女を見据えてこう言った。「ねえ、私を見て、死の匂いや醜さを見て、私の死の気配や醜さを吐き出してみてよ」女は断りたかった、考えただけでも億劫であった、だが骸骨は女の内部に宿って暴れ始めた、…

《創作》幸福について

女は煙の匂いを嗅ぎながら穂が金色に変化してゆくのを見た、それから夕方になり、線香花火をした、宇宙が砕けて土の地面に楽しそうにぽたぽたと落ちた。 幸福とは何かを考えるには時間が足りなかったが、幸福のただ中へ行くのに時間は要らなかった。幸福とは…

《創作》夢のバルセロナ(愛人との逃避行)

バルセロナに住み始めてから半年が経った、身体を構成する空気や有機質が、いよいよこちらの土地の生き物へと自分を変化させてゆくのを日々感じていた。日当たりの悪いこの部屋にももう慣れてしまった、だって外に出ていれば夏は夜まで日が差しているのだ、…

《創作》墓守(愛人との逃避行へ行かない理由)

その女にとって最も正確な職業は墓守だった、女は毎日古代墓のある裏山へと手を合わせた、祈っていたのでもなく願いをかけていたのでもなく、ただそうすることが女のつとめだったのだ。女は墓所のすぐ側の土地へ招かれて住んでいた、その土地の以前の持ち主(…

《創作》人造湖

水盤の中に涙が落ちた、涙は幾つもの輪を描きながら水の中に溶けていった。早朝の庭に出しておいた水盤には木々たちの霊気が漂っていた。「宇宙はこうして始まったのね」女は微笑んで庭木の葉を一枚ちぎって水盤に浮かべた、葉は静かに揺蕩いながら旅に出たよ…