a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

☆創作文

《創作》真夜中の大学に僕は今

真夜中二時の大学に僕は今、忍び込んでいる。大丈夫、授業の後、あの窓を空けておいたから、僕は荷物を背負って校舎の裏側に回り、そこから二階までよじ登る。自転車置き場を足場にすればすぐに僕の制作場所まで辿り着く。肩に背負った袋の中には木材や、そ…

《創作》平手打ち

「いつも両目がすごく奥のほうにあるのよ、洞窟の中から明るい日差しを見ているみたいな感じなの、つまり外界というものが私には存在しないと言ってもいいわ、とても奇妙な感じよ、でもこれを奇妙だと思っているということはね、私にとって通常であるという状…

《創作》表皮越しの世界

女は一人、草むらに横たわっていた、月夜の脱皮は困難だったが肌色の表皮は徐々に剥がれていった、空の遠くでは雷が幾度も光を放っていた、不思議なほど無音だった。表皮は剥がれ落ちたその瞬間にはまだ女自身に属していた、虫たちもそれを知ってか女には一…

《創作》あの子の為にすべき事

とある一羽の鳩は住処を見回した、時折吹き付ける強烈な潮風はここへは入ってこない、開発工事中の鉄筋建築物の内側に鳩は居た。鉄の一部は既に錆びかかっていた、遠くに赤い光が点滅し、巨大な紅白のクレーンが天までの階段を厳かに作っていた。鳩はどこか…

《創作》偶発性の美

女は呻いていた、女の身体からは木の芽が、新芽がいくつも生え、天の眼球に向かって手を伸ばそうとしていた。新芽が伸びる度に女の身体から脂肪が減り、あばらが浮いた、女は料理ばさみで自らの新芽を剪定したが到底追いつかなかった。女にとって生きるとは…

《創作》地下牢(グロ注意)

地下牢に男が一人、座って何やら言葉を発していた、蝋燭だけが男を静かに照らしていた、その小さな炎だけを男は頼り、ただひたすらに人の姿を求めていた。朝…といっても暗がりに何日も閉じ込められている男には解らなかったが…番兵が牢獄の入り口の、ちょう…

《創作》鏡の中の骸骨(美容整形、コンプレックス)

その日の朝、まだ日が昇る前、鏡の中に骸骨が居た、そして女を見据えてこう言った。「ねえ、私を見て、死の匂いや醜さを見て、私の死の気配や醜さを吐き出してみてよ」女は断りたかった、考えただけでも億劫であった、だが骸骨は女の内部に宿って暴れ始めた、…

《創作》幸福について

女は煙の匂いを嗅ぎながら穂が金色に変化してゆくのを見た、それから夕方になり、線香花火をした、宇宙が砕けて土の地面に楽しそうにぽたぽたと落ちた。 幸福とは何かを考えるには時間が足りなかったが、幸福のただ中へ行くのに時間は要らなかった。幸福とは…

《創作》夢のバルセロナ(愛人との逃避行)

バルセロナに住み始めてから半年が経った、身体を構成する空気や有機質が、いよいよこちらの土地の生き物へと自分を変化させてゆくのを日々感じていた。日当たりの悪いこの部屋にももう慣れてしまった、だって外に出ていれば夏は夜まで日が差しているのだ、…

《創作》墓守(愛人との逃避行へ行かない理由)

その女にとって最も正確な職業は墓守だった、女は毎日古代墓のある裏山へと手を合わせた、祈っていたのでもなく願いをかけていたのでもなく、ただそうすることが女のつとめだったのだ。女は墓所のすぐ側の土地へ招かれて住んでいた、その土地の以前の持ち主(…

《創作》人造湖

水盤の中に涙が落ちた、涙は幾つもの輪を描きながら水の中に溶けていった。早朝の庭に出しておいた水盤には木々たちの霊気が漂っていた。「宇宙はこうして始まったのね」女は微笑んで庭木の葉を一枚ちぎって水盤に浮かべた、葉は静かに揺蕩いながら旅に出たよ…

《創作》占い

四柱推命という占いがある、とある女は、占いと呼ばれるものをあまり好ましく思っていなかったが、この占いはどこか、信用していた。占いを信用する、というのは博打を信用するのとほとんど同義である。つまりその女は博打を信用していた、しかし信頼はして…

《創作》レモネード

意味が通じなければやっていることのほとんどは、文字通り意味の無い行為で、独善的なものにしかならないだろうね。言葉っていうのはさ、意味を通じさせる為のものなんだ、同じ言葉を喋っていてもほとんどの場合言葉の真意なんか通じてはいないのさ。その点…

《創作》鈴虫の音

田んぼには鋭利に光る錫色の雀よけの帯が、穂をちょうどかすめるほどの高さに張り巡らされていた。上から見るとそれは巡回路を示す柵のようにも見えた、鬼さんこちら、手の鳴る方へ、案内に従って散策する果てしない迷路のようでもあった。鋭利に光る雀よけ…

《創作》鳥肉

僕は楽園に居るのをやめてしまった、大体10年前に僕はその庭園から抜け出て、以来外側から楽園を見ていた。内部の構造は迷路のようになっていて、手をついて廻っても楽園の中心部には決して辿り着けないのだ。かと思うと、何の自覚もなしに庭園の中心部に居…

《創作》快楽依存症

注射器を手に持ち、女はどんよりとした夏の午後の部屋の中で、ただ一人、汗ばんでその内部に光を吸入させた。色とりどりの世界の素がいかにもなプラスチック製の小さな容器の中に収まってゆくのが見えた。「100本か200本くらい欲しいわね、1000本あったってい…

《創作》降霊術

雅歌は響き続け、皮膚の内外では常に、絶えることのない婚礼の宴が繰り広げられている。 女は円形のテーブルの一席に座して居た。物理的な意味で言えば、それはテーブルの四分の一に相当した、だが魂たちを呼び寄せ、対話するにはそれ以上の面積は必要がなか…

《創作》芝の根の国

女は庭の芝を剥がしていた、どこか凶悪な様相の、腰の高さよりも大きいシャベルを深く土に埋め込ませては、呼吸と共に掘り起こした。芝の根の国は文字通り根絶やしにされていった、剝き出しの土には多くの生き物が右往左往し、嘆いていた。蜩が鳴いた、女に…

《創作》狐につままれた日

薄緑色に統一された巨大な建物中に男の喚き声が響き渡った、皆騒然として声の発信源である男を見ていた。「文句があるなら警察を呼べ!」男は尚もそう叫び、その場であぐらをかいた。 女はそのすぐ側を通り過ぎた、驚くべき事に、女は考え事に夢中で男が叫んで…

《創作》庭で死にたい(汚濁注意)

女は朝露に濡れた庭木に手で触れ、まだ涼しい風に身を任せ、誰も見ていないのをいいことに素足で芝生を踏んだ。その柔らかい感触に静かに全身で歓喜し、女は微笑んだ、庭で死にたいと思うほどに女は朝の庭が大好きだった。如雨露に水を入れて低木の根元を湿…

《創作》午前三時の奇跡

彼女のしようとしていた事が何なのかは僕にはよく理解出来なかったけれど、ともかく彼女は懸命に、午前三時の教会で使命を果たそうとしていた。彼女は命綱なしで巨大な聖母子像のあの金の台座まで登っていた、僕は息を飲んで彼女を見ていた。声をかけたら彼…

《創作》独房の歌

とある男がいた、彼は少年の頃から影を見ていた、影は、影としか言いようがなかった。 その男、もとい元少年は団地という名の独房に住み始めた、子供が出来たからだった、心の内側ではいつまでも移動したいと願っていた、移動を妨げる住処は彼にとってどこで…

《創作》病気手帳

ーーーーー第一幕ーーーーー その時代、国民には病気手帳というものが配布されていた。 病気を持たない国民は一人も居なかった、科学者当人も医師当人も含め全ての人間が何らかの病に冒されて生まれてきているという驚くべき事実(それを意識と呼ぶ者も稀に居た)に、国…

《創作》1996年7月17日

飛行機の話がしたいわ、飛行機って私毎日見ているのよ最近、飛行機は美しいけれど…美しい物ほど怖いのよ。 1996年7月17日、私は飛行機に乗っていたの、今はなきアメリカの航空会社の飛行機。 成田空港を出発して夜の海を越えて南の島まで…飛行機の窓から星空…

《創作》水中秘話

小さな銀器に一度沸かした水を注ぎ、朝靄の中、女は手を合わせた。銀器はコップを半分にしたような大きさで、祈りを捧げるときにだけ使用する小さい器だった、それが祭壇にちょこんと置かれていた。祭壇には水を入れるための銀器とランプと、その銀器の台座…

《創作》俺は山奥にいる

俺は山奥にいる、山奥にいる、山奥にいる、ダムのすぐそばだ。本当はダムだって邪魔なくらいだ、人っ子一人居ない真緑の空気を俺は吸いに来た。来月から働くという仕事場を見た、制服を着て作業をするんだと、一日中、ひと月のうちのほとんどを作業所で過ご…

《創作》万華鏡

僕は万華鏡を持っているんだ、僕だけの万華鏡があるんだ、僕にしか見えない宇宙の模様を僕は知っている。出来事や、まだ出来事になる以前の様々な要素が混ざり合って存在し、ぶつかったときに顕在化する。こちらから見て心地よい事とその逆…万華鏡に散らばる…

《創作》浮気の是非

「神無月くんの誕生日、10月26日、それって私が人生初めての創作文章を書きはじめた日なの!これって運命だと思わない?」女は興奮して叫んでいた、裸でソファーの上に寝転び髪が汗で額に貼り付いていた。「神無月くんの声もこの前電話越しに聞いちゃっ…

《創作》世界は美で溢れている

女は戸惑った、痛みの絵はもう描いたし、今度は楽しい美しい物の総合を描きたかった。しかし絵はそのようには進まなかった、いつでも痛みが在り、日常が美しい楽しいものだけではないことを女に囁いてくるのだった。今現在というものに対し女が思い浮かべる…

《創作》最後の一人から最初の一人に

最後の一個をくれる最初の一人を篤く尊敬しているのです、手持ちの最後の一粒を恵んでくれる最初の人を尊敬しているのです、最後の一個というのは物ではないのです。 最後の一個とはその人自らが、最後の一人と自発的に目を合わせてくれる事なのです。私は受…