a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

内緒の話

これは内緒の話なのだけれど、この職場はね、駅のすぐ向こう側、通りを二三本跨げばあの人が居るから選んだのよ。私が埋め立ての海水臭い街からこっちに越してきたとき、どこに勤めに出ようか、どの街に行こうか迷ったの。家からバス停までの距離、バス停か…

痛みと世の中(雑記)

ここ数ヶ月で寝返りが完全に打てなくなった、以前は打てたので寝返りを打つと身体がどれほど楽かを知っている、回復する見込みはない。夜間、下肢だけは自動的に動いているのだがそれすら脱臼系の痛みが生じ、その痛みで何度も目が覚めている。朝、やや床ず…

ああ肋間神経痛

夜、薄暗がりの視界、その片隅に青白い光が見えた、それはだんだんこちらに近づいてきて私の胸にのしかかった。私は胸にひびが入るのをまざまざと感じ、身を動かそうにも骨が軋んで動かず、やっとの事で起き上がると左胸を押え呻いた。呻き声を出したら出し…

【仕事について】目の前に確かに在る仕事(頭と身体の弱い人間の働き方)

今月末でベッドメイクの仕事を辞めることにした、何故ならば、今月末で私の雇い先である清掃派遣業者がこのホテル…もとい、この地域から一気に撤退するからである。持病の臼蓋形成不全が悪化したように感じ始めていたので、撤退と共にそのまま自然に解雇とい…

M氏、いつもありがとう(夫婦らしき二人)

いつもありがとう、そう私はM氏に言う、毎日言う。いつもありがとう、M氏はその言葉に対して頷く、毎日頷く。おそらく私としか…形の上でだが…付き合ったことの無いM氏は、女という生き物が毎日数回は礼を言う生き物であると思っている。 数え切れないほど…

憧れ

人間にとって一番強い感情や動力源て何だと思います?それはね、怒りでも憎しみでも、自分が何かに勝ちたいという圧倒的な気持ちでもなく、憧れ、ただそれだけなんですよ。最近私は人の気持ちがわかるようになりましたよ、今まで謎だったんです。どうして人…

《創作》真夜中の大学に僕は今

真夜中二時の大学に僕は今、忍び込んでいる。大丈夫、授業の後、あの窓を空けておいたから、僕は荷物を背負って校舎の裏側に回り、そこから二階までよじ登る。自転車置き場を足場にすればすぐに僕の制作場所まで辿り着く。肩に背負った袋の中には木材や、そ…

【詩】赤い骸骨

赤い二体の骸骨が尋ねるお前には出会うべき人はいないのかい?お前は何故その人に向き合わなかったのかい?お前は何故その人以外の男に自分の世話をさせて平気でいるんだい?お前は何故肉体の若い時にその人を懸命に探そうとしなかったのかい?お前にせっか…

【詩】俺と言うあなたへ

俺 って今日のあなたは言うのですね、3年経ってはじめて聞きました、一体どういう風の吹き回しでしょうか、この吹き荒れる風のせいでしょうか。実際の時間は10分しかないので、数枚の絵だけを一秒で見せるに留めます、この一秒に私の一ヶ月の時間が込めら…

【散文詩】こんな仕事

「こんな仕事」と言う老婆に私は言う。「こんな仕事とあなたは言うけれど」と私は言う。「貴女にとってのこんな仕事は、私にとっては今までのどんな仕事よりも働く喜びに溢れていますよ」と私は言う。「貴女にとってのこんな仕事は、私には、行うのが奇跡のお仕事な…

【詩】道筋

悪い事をしたのに善い事をしたのと同じかそれ以上に私は喜びに打ち震えている 何故なら今まで流した涙を全て飲み干せたから 悪事は悪事ではなかったと道筋でしかなかったと理解したから 誰も所有出来ない数字なら私が頬を叩いた人へ渡せるけれど謝罪はそれを…

【詩】まさか許しが

まさか許しが、このような形で私に、恵みとして与えられるとは。私は感嘆します、あなたが、許せないと私を指さす度に私は、自分が許せなかった誰かを、許しているのです。許しというものがこのような形で私に、内部からの恵みとして湧き起こるとは。誰も許…

【詩】加害者の私

あの子は私とよく似た人あの子は私を大嫌い私を大嫌いなあの子をあぜ道で呼び止めて思い切りぶん殴った自分の泣き顔がどんなか見たかったから その話を私は笑いながら先生にしたの話題はなんだってよかった先生と話がしたかったから 先生は言ったの「それで、…

【詩】性の営み

虫が鳴いている今この瞬間しかない場所で虫が誰かを探してただひたすらに鳴いている 私が私の肉体を纏うよりもずっと前から私が別の私だった頃から連綿と繰り返されてきた光の営み 性の営み 虫の音の響くまさにこの瞬間あなたと私は一緒に居る伝統の柵の内側…

《創作》平手打ち

「いつも両目がすごく奥のほうにあるのよ、洞窟の中から明るい日差しを見ているみたいな感じなの、つまり外界というものが私には存在しないと言ってもいいわ、とても奇妙な感じよ、でもこれを奇妙だと思っているということはね、私にとって通常であるという状…

《創作》表皮越しの世界

女は一人、草むらに横たわっていた、月夜の脱皮は困難だったが肌色の表皮は徐々に剥がれていった、空の遠くでは雷が幾度も光を放っていた、不思議なほど無音だった。表皮は剥がれ落ちたその瞬間にはまだ女自身に属していた、虫たちもそれを知ってか女には一…

《創作》あの子の為にすべき事

とある一羽の鳩は住処を見回した、時折吹き付ける強烈な潮風はここへは入ってこない、開発工事中の鉄筋建築物の内側に鳩は居た。鉄の一部は既に錆びかかっていた、遠くに赤い光が点滅し、巨大な紅白のクレーンが天までの階段を厳かに作っていた。鳩はどこか…

《創作》地下牢(グロ注意)

地下牢に男が一人、座って何やら言葉を発していた、蝋燭だけが男を静かに照らしていた、その小さな炎だけを男は頼り、ただひたすらに人の姿を求めていた。朝…といっても暗がりに何日も閉じ込められている男には解らなかったが…番兵が牢獄の入り口の、ちょう…

《創作》偶発性の美

女は呻いていた、女の身体からは木の芽が、新芽がいくつも生え、天の眼球に向かって手を伸ばそうとしていた。新芽が伸びる度に女の身体から脂肪が減り、あばらが浮いた、女は料理ばさみで自らの新芽を剪定したが到底追いつかなかった。女にとって生きるとは…

《創作》鏡の中の骸骨(美容整形、コンプレックス)

その日の朝、まだ日が昇る前、鏡の中に骸骨が居た、そして女を見据えてこう言った。「ねえ、私を見て、死の匂いや醜さを見て、私の死の気配や醜さを吐き出してみてよ」女は断りたかった、考えただけでも億劫であった、だが骸骨は女の内部に宿って暴れ始めた、…

《創作》幸福について

女は煙の匂いを嗅ぎながら穂が金色に変化してゆくのを見た、それから夕方になり、線香花火をした、宇宙が砕けて土の地面に楽しそうにぽたぽたと落ちた。 幸福とは何かを考えるには時間が足りなかったが、幸福のただ中へ行くのに時間は要らなかった。幸福とは…

《創作》墓守(愛人との逃避行へ行かない理由)

その女にとって最も正確な職業は墓守だった、女は毎日古代墓のある裏山へと手を合わせた、祈っていたのでもなく願いをかけていたのでもなく、ただそうすることが女のつとめだったのだ。女は墓所のすぐ側の土地へ招かれて住んでいた、その土地の以前の持ち主(…

《創作》夢のバルセロナ(愛人との逃避行)

バルセロナに住み始めてから半年が経った、身体を構成する空気や有機質が、いよいよこちらの土地の生き物へと自分を変化させてゆくのを日々感じていた。日当たりの悪いこの部屋にももう慣れてしまった、だって外に出ていれば夏は夜まで日が差しているのだ、…

《創作》人造湖

水盤の中に涙が落ちた、涙は幾つもの輪を描きながら水の中に溶けていった。早朝の庭に出しておいた水盤には木々たちの霊気が漂っていた。「宇宙はこうして始まったのね」女は微笑んで庭木の葉を一枚ちぎって水盤に浮かべた、葉は静かに揺蕩いながら旅に出たよ…

幸福のスペイン寿司

真夜中の12時を過ぎたら世間体は止め止め、情動の時間、衝動の時間、夢の時間、真実の時間。 そういうわけで私の両親は1日は27時間くらいあると思っていたってわけ、12時、つまり24時を回ったら全てが崩れ落ちて宇宙と交信できると本気で思ってたし、素っ裸…

《創作》占い

四柱推命という占いがある、とある女は、占いと呼ばれるものをあまり好ましく思っていなかったが、この占いはどこか、信用していた。占いを信用する、というのは博打を信用するのとほとんど同義である。つまりその女は博打を信用していた、しかし信頼はして…

《創作》レモネード

意味が通じなければやっていることのほとんどは、文字通り意味の無い行為で、独善的なものにしかならないだろうね。言葉っていうのはさ、意味を通じさせる為のものなんだ、同じ言葉を喋っていてもほとんどの場合言葉の真意なんか通じてはいないのさ。その点…

《創作》鈴虫の音

田んぼには鋭利に光る錫色の雀よけの帯が、穂をちょうどかすめるほどの高さに張り巡らされていた。上から見るとそれは巡回路を示す柵のようにも見えた、鬼さんこちら、手の鳴る方へ、案内に従って散策する果てしない迷路のようでもあった。鋭利に光る雀よけ…

《創作》鳥肉

僕は楽園に居るのをやめてしまった、大体10年前に僕はその庭園から抜け出て、以来外側から楽園を見ていた。内部の構造は迷路のようになっていて、手をついて廻っても楽園の中心部には決して辿り着けないのだ。かと思うと、何の自覚もなしに庭園の中心部に居…

《創作》快楽依存症

注射器を手に持ち、女はどんよりとした夏の午後の部屋の中で、ただ一人、汗ばんでその内部に光を吸入させた。色とりどりの世界の素がいかにもなプラスチック製の小さな容器の中に収まってゆくのが見えた。「100本か200本くらい欲しいわね、1000本あったってい…