大熊あれいブログ

文章ブログです、雑記帳のような感覚で主観的、感覚的に詩やエッセイのような独白文章を書いています。不定期です。

不可思議な縁

写真には建物を超える高さの、実寸大の赤黒いガンダムの足が映っていた。 「これが僕の、美大に居た頃の作品…若気の至りですよ」と彼は書いてよこした。 まだ対面していない彼の、感性に、私は驚いてしまった。 無意味で巨大、私はこの作品と対峙する事が出来…

尊敬するあなたへの手紙

人生で、これをやらなければ後悔する、と感じることが今、一つあります。 それはあなたに、完成した絵を見せることです。 あなたの文章を読んだとき、私は途方もない気持ちに苛まれ、明け方まで泣きました、そしてほとんど使わない電卓を取り出しました。 あ…

黒い紙(詩)

まだ寝床に居る素裸の時分黒い大きな紙が私の視界ギリギリに迫ったそれは揺れていて意外なほど好意的であった 黒い紙は私に服として巻き付くのかと思いきや誰かと私との間に立ち両者の意志を仲立ちしているかのようだ 起床した私は自分が今しがた恋人と別れ…

八王子スーパー拳銃強盗事件(自分のこと)

※この記事は、当時の状況を私が体感したままに書いております。事件に関連する事を開示しているというより、個人の主観に基づいての回想録としての文章です。故人を冒涜、事件を娯楽として文章に起こしているわけではありません。 ・・・ 今から四半世紀ほど…

豊穣の女神は微笑まない(性)

やってきた郵便配達夫に私は言う。 「あれ?もしかしてさっきもチャイムならしていかれました?」 配達夫が笑顔で頷く。 「いや~すみません、私さっき帰ってきたばっかりで、仕事で汗かくものだから着替えてて素っ裸で、出られませんでしたよ」 そう言う私に配…

春の霊峰(詩)

あの団地に居た小さい頃ひどく怒られたその後によく震えながらベランダに出て私は私にしか見えない山を夕日を浴び膝を抱え詣でた 春の霊峰はタライに水を張ったその中に浸してある色とりどりの水晶にのみ内在する水晶をひとつコンクリートに水が滴り灰色がさ…

出会い

年末年始と私は人に疑われた、誤解が誤解を生み、強引なナンパを強気に退け、私は悪人になった。仕事でもそうだったし、仕事とは無関係の通販でも、誤送された荷物を横取りしたと勘違いされたりと踏んだり蹴ったりであった。そんなクリスマスから正月明け数…

シャーレ(詩)

若き日の母は白衣を着シャーレという小宇宙に生物の種を撒いて発芽させる仕事をしていた 蛍光灯の白奥の廊下をさらに突き進むと動物実験棟に至る ふとした折何と断定できぬ叫び声がする そのような禍々しい場所のすぐそばで母は白衣という法衣にその身体を包…

鶴の児(詩)

鶴という鳥が実在するのかどうかを知るそれよりも前から 私はその鳥の模様を指でなぞっていた 母が仏壇に供えていた真鍮の水入れに 刻まれた鶴を 私は薄暗い畳の部屋で一人きり 愛でていた あなたは 今悠々と冬空を飛んでいるのかしら それともあなたは 鶴の…

朱色からの避難(宗教)

朱色は私には強すぎる、真冬の朝日は私にはもう痛い、昔からそうだった、私は正月が苦手だ。感覚のみで行われるのが日本の行事である、そこには言葉が無い、色だけがひたすら迫ってくるのをすんなりと受け入れる、それが神事である。 母の所属していた宗派に…

腱鞘炎

人間は楽器だ 右手の弦は弧を描いて、送電線を見つめたままぴんと張りつめている これ以上力をかけたら、霜柱と一緒に、午後には空気に弾けてしまう 手の甲に筋肉は無い、ただ弦が張られているだけなのだ、指先から音を奏でるため、それだけが手の役割だと、…

評価(芸術)

文章や絵は、書こう描こうとしてその作品が完成するのではない、本人が書かずにおれなくてそうしているだけであって、その結果何かが生じているに過ぎないと、猛烈に言いたくなるときがある。 美術の時間に感じた違和感はずっと拭えない。評価されるというこ…

わかったって言ってくれ

伝言の伝言の伝言は、微笑みながら網を張って、年末の獲物を待っていたどうにも足が動かないと思ったら、私は身体をすっかり絡め取られていたらしい 君の笑顔のツケを私は払っている私の当たりの強さと君の物腰の落差に驚いてしまった分を加算して相手は支払…

方眼用紙【宗教】

人を殺した事がある、私は11歳だった、表面上は机に向かい、白地に青の線が引かれた美しい方眼用紙を、汚す要領で文字を記していた、人を殺す物語をその時の私は書いていた。 方眼用紙上での私は東欧に居た、寒村から始まったこの血筋は未だ寒村に留まり続…

夢のポリネシアンセックス【逸脱】

「ポリネシアンセックスって知ってる?射精が目的ではないんだ、お互いの気持ちを尊重して肌を重ねるんだよ、入れたまま動かずにね」 私の好意をそれとなく遠ざけるため、性的なトラウマを解消する方法を医師として提示するため、夫婦の問題についても関与出来…

風景の臍【概念】

風景には臍がある、歩いていると一定の間隔でカタルシスを感じる場所に行き当たるような自然の仕組みが、地形には施されている、それを風景の臍と私は呼んでいる。 風景の臍という言葉は、私の、風景に対する褒め言葉である、歩いていて幸福を感じる瞬間、煌…

哀歌【性的トラウマと救い】

私は「性的被害者」を名乗りたくはない、被害とは過去の「現象」である、その人本人の人格ではないからだ。 被害について、性的トラウマについて語るというのは基本的には哀歌を唄うのと同義であると私は思う、歌い手の名は本人の名乗りたいように名乗れば良いの…

祈りと文章【ブログ】

母は夕方になるとよく、西日の差す部屋で手を合わせて祈っていた、その文言は釈迦の言葉だったようだが母自身、自分が何を唱えているのかはほとんど気にはしていなかった、母の母も、その母の母もそうやって代々祈っていたのだ、彼女たちにとって祈りはリズ…

未達と自殺【社会】

私は客観的な時間ではたったの1年、しかし内的な時間に於いては果てしなく長い1年を正社員として過ごした、電話営業の会社に10年前の私は居た。 なんでまたそんな会社に、と思うかも知れないが、私としては奨学金を返すということと、実家への仕送り、自…

嫉妬

「週末はNYへ出張に行くんだ。俺の参加したコレクションがメトロポリタンに展示されたんだよ、自分の作品が飾られて世界の人から見られるのは、本当に名誉なことだよ」 私は人に対して嫉妬した事があまり無い、だが明らかに、私は彼に嫉妬していると気付いた…

☆Kちゃんのスチームケース【精神】

黄緑色のスチームケースを、Kちゃんという友人からもらった。スチームケースというのはシリコンで出来ている料理用品である、中に少しの水と一緒に野菜を入れてレンジで温めるとあら不思議、すぐに美味しい温野菜になる、そんな日々の生活にあるとちょっと…

☆IUDリングという子宮内部の避妊器具【性】

子宮の中にはIUDと呼ばれる避妊用の器具、避妊リングと呼ばれる物が入っている、私の子宮の中には、である。 この器具の存在自体あまり知られていない。レントゲンを撮った際、担当した白衣を着た整骨院の医者はしきりに「何かの手術跡ではないのですか」と…

首都高速の高架下【詩】

首都高速の高架下、あのコンクリート色の場所は、大きな川辺のすぐそばにある。 高架下と交差するように架けられた橋の片隅。虹の大橋と看板がつけられたあの橋の、そのすぐそば、真上には首都高の裏側がむき出しになっている風の吹きすさぶ場所、そこに木は…

寒いので夕日を食べる【詩】

寒いので夕日を食べる、もうすぐ冬至なのだ、身体には日の光を蓄えなきゃならない、地面に属する構成のものは、太陽が少なくなると脆くなってしまう、それは人間とて同じだ。 橙色のもので代用できる、ぎっしり詰まった夏の身体が恋しい、柔らかく湧き出る春…

ビッグママ【職場の人間たち】

私の現在の仕事はホテルの清掃である、これが意外なほど性にあっている、体力系でありながら一人で仕事を進めてゆけるので「ノリ」や「空気」はそこまで必要でなはい、ではこの職場で働く清掃婦たちは皆寡黙でとっつきにくい性格なのかというと…実に相反するよう…

☆M氏の拒絶と愛(性的不能、セックスレス、信頼関係)

薄暗い夜の部屋にて、私の目前でオレンジ色の閃光が散った、黄緑色も少し混ざるくらいの、幾筋もの強烈な火花だった、はっとした時にはもうドライヤーから焦げ臭い匂いが漂っていた。 私の気付かぬ間に、私の身体は悲鳴をあげたらしかった、隣の部屋からM氏…

芝生で覆われた土手一面に、霜が降りて光っている【詩】

芝生で覆われた土手一面に、霜が降りて光っている、そんな朝はただひたすらに青く、湖に街ごと沈んでしまったかのようだ。この青い空気を羽に内包しているらしい白鷺が、音も無く飛翔する、そのまままっすぐ、あの橋の下まで。 あの橋の下で私は一晩中過ごし…

ポエム【詩】

空気の澄んだ午後に、バスに乗っていて窓越しに外を見たら、落ち葉の舞い散るただ中に、妙に好みの男が立っていたので思わず私は凝視した。 意外なほど温度を感じる冬の日差しのせいか、マフラーを取りさって顔を上げた彼が、なんとこちらを見つめ返してきた…

白装束の人々【霊のはなし、概念】

まだ家族で車に乗っていた頃、まだ私も信仰心を掲げていた頃、妹がようやく物心ついた頃、私たちはよく祖父母の家へ遊びに行っていた。 山々の合間を縫うように高速道路で走った先の盆地へと頻繁に赴いた。その日は「した道」、要するに一般道を使って行ってみ…

芸を発表するということ【芸術】

平坦にされた一区切りの地域と、そこに立ち並ぶ電信柱、曇天、共産圏みたいな景色だなと無意識のうちに思う。きっとこの区域には同じ家が建つのだ、灰色だか肌色だかの、同じ壁や屋根の家々が立ち並ぶ一帯となるのだ。 ネット上で詩の朗読を聴いた、集団で詩…