a.o独白ブログ

詩や創作文章を公開しています、時に汚濁あり時に18禁あり、綺麗な場所ではございません、あしからず。

【詩】林檎の園

林檎を囓って振り向いたあなたは誰?ここは林檎の園、誰でも入ってきていいの、誰でもあたしを食べて良いのでも甘い果実を食べたのならこのあたしに教えて頂戴、あなたは一体誰?あたしはあなたの身体の中であなたになるだから知りたいのよあたしが誰になる…

《創作》独房の歌

とある男がいた、彼は少年の頃から影を見ていた、影は、影としか言いようがなかった。 その男、もとい元少年は団地という名の独房に住み始めた、子供が出来たからだった、心の内側ではいつまでも移動したいと願っていた、移動を妨げる住処は彼にとってどこで…

《創作》病気手帳

ーーーーー第一幕ーーーーー その時代、国民には病気手帳というものが配布されていた。 病気を持たない国民は一人も居なかった、科学者当人も医師当人も含め全ての人間が何らかの病に冒されて生まれてきているという驚くべき事実(それを意識と呼ぶ者も稀に居た)に、国…

【詩】内なる雅歌

あなたを婚礼に招きましょう、秘密の婚礼にあなたを招き、相聞歌をうたいましょう一緒に、内なる雅歌を、歌いましょう一緒に王様には王妃が六十人、側女が八十人六十人の王妃には麗しい下男が六十人、八十人の側女には恋人が八十人いいじゃない本当のことを…

《創作》1996年7月17日

飛行機の話がしたいわ、飛行機って私毎日見ているのよ最近、飛行機は美しいけれど…美しい物ほど怖いのよ。 1996年7月17日、私は飛行機に乗っていたの、今はなきアメリカの航空会社の飛行機。 成田空港を出発して夜の海を越えて南の島まで…飛行機の窓から星空…

《創作》水中秘話

小さな銀器に一度沸かした水を注ぎ、朝靄の中、女は手を合わせた。銀器はコップを半分にしたような大きさで、祈りを捧げるときにだけ使用する小さい器だった、それが祭壇にちょこんと置かれていた。祭壇には水を入れるための銀器とランプと、その銀器の台座…

《創作》俺は山奥にいる

俺は山奥にいる、山奥にいる、山奥にいる、ダムのすぐそばだ。本当はダムだって邪魔なくらいだ、人っ子一人居ない真緑の空気を俺は吸いに来た。来月から働くという仕事場を見た、制服を着て作業をするんだと、一日中、ひと月のうちのほとんどを作業所で過ご…

《創作》万華鏡

僕は万華鏡を持っているんだ、僕だけの万華鏡があるんだ、僕にしか見えない宇宙の模様を僕は知っている。出来事や、まだ出来事になる以前の様々な要素が混ざり合って存在し、ぶつかったときに顕在化する。こちらから見て心地よい事とその逆…万華鏡に散らばる…

《創作》浮気の是非

「神無月くんの誕生日、10月26日、それって私が人生初めての創作文章を書きはじめた日なの!これって運命だと思わない?」女は興奮して叫んでいた、裸でソファーの上に寝転び髪が汗で額に貼り付いていた。「神無月くんの声もこの前電話越しに聞いちゃっ…

《創作》世界は美で溢れている

女は戸惑った、痛みの絵はもう描いたし、今度は楽しい美しい物の総合を描きたかった。しかし絵はそのようには進まなかった、いつでも痛みが在り、日常が美しい楽しいものだけではないことを女に囁いてくるのだった。今現在というものに対し女が思い浮かべる…

【詩】蝉と一緒に

砂の色をした一本の糸を針に通し、鋭い針の先端を布にあて、静かに縫い進めてゆく服はもう少しで変化を遂げ、夏を泳ぐ一枚の布になる左手で服を、右手で糸を通して行くこの作業に左右の手が慣れてきたら、ほらね、蝉が鳴き始めたどこかへ大量の水が押し寄せ…

《創作》最後の一人から最初の一人に

最後の一個をくれる最初の一人を篤く尊敬しているのです、手持ちの最後の一粒を恵んでくれる最初の人を尊敬しているのです、最後の一個というのは物ではないのです。 最後の一個とはその人自らが、最後の一人と自発的に目を合わせてくれる事なのです。私は受…

《創作》樫の木

影の濃度が一番濃い人工物は、兵器だよ、と対岸の樫の木は言った。女と木は時たま、川を挟んで二人だけで会話をした。そこは小さな谷で、木々が小川に迫るように生え、山からの風が勢いよく海まで涼やかに通り抜け、鳥たちもその流れに身を任せて飛んでいた…

《創作》月面装飾のエレベーター(R18)

神社のさ、境内の裏手でセックスするんだよこの時期は、と男は言った。打ち水をされたコンクリートの地面から湯気が出ており、その上を犬が飼い主と歩いているのがガラス越しに見えた、日差しは強く黒い影が浮き出ていて今にも動き出しそうだった。「影の方が…

《創作》小さな影

鈍色の小さな影が一体居た。 人型をした影の民には固有名詞は無く、それぞれが散り散りばらばらに人工物から湧き出でて移動しながら存在していた。いつのまにか生じたこの小さな影も、磁力に引っ張られて次の行く宛てを漠然と決め、ゆっくりと移動して過ごし…